行政書士
安田 大祐
リブレグループ(行政書士法人リブレ/社会保険労務士法人リブレ/株式会社リブレキューズ)代表。北海道大学教育学部卒業後、医療法人での勤務を経て独立。障害福祉サービス事業所の立ち上げ支援や運営支援を専門としている。趣味は音楽活動や海外バックパッカー旅行。「人生一度、やりたいことをやる!」をモットーに挑戦を続けている。
[障害者向けサービス]
本記事では、運営指導で確認されやすい身体拘束等の適正化について、事業所で行うべきこと、減算にならないための対策、運営指導でよくある指摘事例など、事業所がしなければならない対応やチェックすべきポイントをわかりやすく整理して解説しています。
障害福祉サービスの運営指導で、近年とくに厳しく確認されていることのひとつが身体拘束等の適正化です。身体拘束は、利用者本人の権利や尊厳に深く関わるため、原則として禁止されています。例外的に認められるのは、利用者または他の利用者の生命・身体を守るために、緊急やむを得ない場合に限られます。
そして、その場合であっても、単にその場の判断で実施してよいものではなく、組織的な検討、個別支援計画への記載と利用者や家族への説明、身体拘束等の原因となる状況の分析および身体拘束等の解除に向けて身体拘束等の必要性や方法等について定期的な見直しが必要です。現在では委員会の開催、指針の整備、研修の実施などが義務化されており、未実施の場合には身体拘束廃止未実施減算が適用される運用となっています。
実際に減算適用の指導が行われた事例もあり、もはや“やっていないと注意される”レベルのことではありません。減算が適用されると、事業所の収入にも直結します。
さらに、適正化の要件を欠いた身体拘束は、虐待とみなされるリスクもあります。障害福祉サービス事業所にとっては、法令遵守と事業所経営の両面から、最優先で整備すべきテーマです。
運営指導でよく見られる指摘は、大きく3つです。
第一に、指針の未整備または周知不足です。書類として作っていないケースはもちろん、作成済みでも職員が内容を理解していなければ不十分と評価されかねません。
第二に、委員会と研修の未実施です。身体拘束適正化委員会は年1回以上、研修も年1回以上の実施が必要で、実施しただけでなく、議事録や研修記録を残し、結果を従業者へ周知していることが大切です。なお、年度で1回ではなく、前回の実施から1年以内に実施するようにしましょう。
第三に、やむを得ず身体拘束を行った際の検討・記録不足です。身体拘束等が認められる要件には切迫性・非代替性・一時性の3要件が必要であり、利用者本人又は他の利用者等の生命、身体、権利が危険にさらされる可能性が著しく高いこと、身体拘束その他の行動制限が一時的なものであることという要件をすべて満たす必要があります。記録においては態様、時間、利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由、解除に向けた検討経過まで細かく記載することが求められます。
一部の要件のみ対応ができていないという事例も多いため、「同意書だけがある」「委員会は開催したが記録がない」といった状態は要注意です。 予め年間スケジュールを立て、計画的に実施するようにしましょう。
身体拘束の適正化で重要なのは、「身体拘束をしない」という理念だけでなく、「やむを得ない場合でも適法・適切に運用できる体制を整える」ことです。今日からできる対応としては、まず指針を整備し、全従業員ががいつでも確認できる状態にすること。次に、委員会を年1回以上開催し、結果を従業員へ周知し、研修も年1回以上確実に実施することです。
そして、万が一やむを得ず身体拘束を行う場面では、3要件の確認、本人・家族への説明、個別支援計画への記載、開始から解除までの詳細記録を徹底することです。
運営指導は、書類の有無だけでなく、実際に運用されているかまで見られます。すべてしっかり実施していると思っていても、実施したという記録がなければやったことを証明することができません。
減算や指摘を避けるためだけでなく、利用者の権利擁護と現場の安心のためにも、いま一度、事業所の体制を総点検してみてはいかがでしょうか。
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