
行政書士
安田 大祐
リブレグループ(行政書士法人リブレ/社会保険労務士法人リブレ/株式会社リブレキューズ)代表。北海道大学教育学部卒業後、医療法人での勤務を経て独立。障害福祉サービス事業所の立ち上げ支援や運営支援を専門としている。趣味は音楽活動や海外バックパッカー旅行。「人生一度、やりたいことをやる!」をモットーに挑戦を続けている。
[障害者向けサービス]
障害福祉サービス事業を開設する際には、「障害者総合支援法」などの福祉関連法令だけでなく、建築基準法・消防法・都市計画法など多くの法令を理解し、遵守する必要があります。本記事では、土地・建物の確保から消防設備、個別事業ごとの法令対応、自治体独自の上乗せ条例まで、開業前に押さえておくべき関連法令を実務的にわかりやすく解説します。
障害福祉サービスの開設を検討される際には、障害者総合支援法や児童福祉法といった障害福祉サービスに関する法令や制度を理解しておく必要があります。
しかし、障害福祉サービスの開設には、障害福祉サービスに関する法令以外にも多岐にわたる法令の遵守が求められることをご存知でしょうか。 これを見落としてしまうと、どんなに素晴らしい事業計画があっても開設ができないということになってしまいます。
今回は、障害福祉サービス事業の安全かつ適正な運営のために必要な関連法令について、実務的な観点から詳しく解説していきます。
目次
障害福祉サービスの開設には適切な立地と建物の確保が必要不可欠です。 ここで最初に直面するのが都市計画法の規制です。特に注意が必要なのは「市街化調整区域」での制限です。 この区域内では、原則として建築物の建築、改築、用途変更が認められていません。
「条件の良い物件が見つかったのに使えない」という事態を避けるため、物件探しの初期段階で必ず自治体の都市計画を担当する部署に区域区分と用途地域を確認するようにしましょう。
また、建物については建築基準法の規制があります。 建物は新築・既存の建物を問わず、すべての建物が満たすべき安全基準が定められています。
特に重要なのは、既存の建物を障害福祉サービス事業所として利用する場合の「用途変更」手続きです。原則として、面積が200㎡を超える場合は建築確認申請を伴う用途変更手続きが必要となり、用途に応じた仕様変更が求められます。これには専門的な知識を要するため、建築士などの専門家に確認するようにしましょう。
さらに、各自治体では福祉のまちづくり条例が定められている場合があり、国の基準を上回るバリアフリー設備の設置が求められることがあります。 出入口の幅、スロープの勾配、誘導表示、多機能トイレの整備など、内装のレイアウトにも大きな影響を及ぼしますので、建築基準法と合わせて確認する必要があります。
そして、土地と建物についての確認は必ず物件契約「前」に行う必要があります。
物件を契約してから、「この建物は障害福祉サービス事業所として使用できない物件だった……」ということにならないよう、必ず事前に確認するようにしてください。
消防法は、生命を守る観点から極めて重要です。
対象の用途や収容人員により、自動火災報知設備、誘導灯、消火器、スプリンクラーなどの設置要件が変わります。
そのため、所轄の消防署の予防課へ平面図を持参し、必要な設備と工事・消防の検査の流れを確認することが必要です。 物件の内装を担当する業者や工務店に、消防設備についても対応が可能か相談し、確認するようにしましょう。
また、特に障害福祉サービスでは、利用者の中に避難をする際に支援が必要な方がいることを前提とした避難計画の策定も重要となってきます。
障害福祉サービス事業所で行う活動やサービス内容によっては、これまで挙げた法令以外での規制にかかる場合があります。
ここでは、いくつか代表的なものを紹介します。
通院などによる送迎を有償で行う場合、道路運送法に基づく一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)や福祉有償運送の手続きが必要です。
就労継続支援などの生産活動で食品の製造や加工、販売を行う場合には、食品衛生法および自治体の条例の遵守が必要です。
事業所での食事提供についても、規模などに応じて届出が必要な場合があります。
就労継続支援などでリサイクルショップの運営や中古品の売買を行う場合、古物営業法に基づく古物商許可申請が必要です。
農業分野と福祉分野が連携して障害者の就労や社会参画の場を作る、いわゆる農福連携で農地を活用する場合は、農地法に基づく許可や届出が必要となることがあります。
国の法律に加えて、各自治体では独自の条例により、法律よりも厳しい基準や追加の要件を設けている場合があります。
景観への規制・屋外広告の規制・バリアフリー条例など、地域によって様々な要件が上乗せされていることがあるため、必ずその自治体のルールを確認するようにしましょう。
開設スケジュールに余裕を持ち、各所管の窓口への早めの相談を心がけましょう。
しかし、ご自身で全ての関係法令をクリアできているか確認・判断することは非常に難しいので、建築士や行政書士などの専門家との連携が、スムーズな開業のための重要な要素のひとつといえます。
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