
行政書士
安田 大祐
リブレグループ(行政書士法人リブレ/社会保険労務士法人リブレ/株式会社リブレキューズ)代表。北海道大学教育学部卒業後、医療法人での勤務を経て独立。障害福祉サービス事業所の立ち上げ支援や運営支援を専門としている。趣味は音楽活動や海外バックパッカー旅行。「人生一度、やりたいことをやる!」をモットーに挑戦を続けている。
[障害者向けサービス]
障害福祉サービス事業所にとって重要な「運営指導」と「監査」。両者の違いを正しく理解することで、適切な事業所運営とリスク回避につながります。本記事では、その目的や実施背景、日頃からできる備えについて詳しく解説します。
障害福祉サービス事業所を運営していると、「運営指導」や「監査」という言葉を耳にする機会が多いと思います。どちらも行政による検査という共通点がありますが、その目的や実施される背景には違いがあります。この違いを正しく理解することは、適切な事業所運営を行う上で非常に重要です。今回は、この2つの制度について詳しく解説します。
目次
運営指導は、以前「実地指導」と呼ばれていた制度で、概ね3年に1度の頻度で定期的に実施されます。この指導の主な目的は、事業所が制度の基準に従って適切に運営されているかを確認し、必要に応じて行政が指導や助言を行うことです。
運営指導では、人員配置基準、設備基準、運営基準などが適切に守られているか、利用者への適切なサービス提供が行われているか、記録や書類の整備状況などが詳細にチェックされます。また、複数の事業所を対象とした説明会形式で行われる「集団指導」もこの運営指導の一環として位置づけられています。
重要なのは、運営指導は問題があるから実施されるのではないということです。これは、事業所の質の維持・向上を図るための機会と捉えることができます。指摘があった場合も、それは改善のチャンスとして前向きに受け止めましょう。
※とはいえ、算定している基本報酬や加算に関する算定要件を満たしていないことが発覚した場合などは報酬返還に至ることもありますので、普段からルールを守った運営をすることが非常に大切となります。
監査は運営指導とは全く異なる性質を持っています。監査は定期的に行われるものではなく、事業所に重大な問題が疑われる場合に実施される特別な調査です。
具体的には、指定取り消しなどの行政処分の事由に該当すると認められる場合、報酬の不正請求が疑われる場合、利用者への虐待が疑われる場合などに実施されます。監査では問題の解明と事実確認を行い、場合によっては事業所の指定取り消しや多額の報酬返還などの重い処分につながる可能性があります。
運営指導と監査の最も大きな違いは、その目的と実施される背景です。
運営指導は事業所の健全な運営をサポートし、質の向上を図ることが目的の制度です。
これに対して監査は、重大な法令違反や不正行為の疑いがある場合の是正を目的とした厳格な調査となります。
適切な事業所運営を維持するためには、以下のポイントを日頃から心がけることが重要です。
行政の担当者は日頃から事業所の運営を見ているわけではありません。そのため、事業所が適切な支援を行っているかはすべて残っている記録で確認、判断します。記録はしつこいくらいに残しておくくらいの気持ちでいましょう。
人員配置基準が守れているか、シフトを毎月確認しましょう。新しく入職したスタッフがいる場合には確実に資格証のコピーをもらうようにし、変更届が必要な場合は忘れずに届出を行いましょう。
加算要件の根拠となる書類はしっかり記録し残しましょう。(例:欠席時対応加算の相談援助の記録など)加算に変更があった場合は体制届の提出のほか、請求ソフトの加算の設定変更もお忘れなく!
運営指導は怖がるものではなく、事業所の質向上のために活用すべき機会です。一方で、監査の対象となるような事態を防ぐためには、平時からのチェックが最大の予防策となります。
運営指導と監査の違いを正しく理解し、日頃から適正な事業所運営を心がけることで、利用者に安心・安全なサービスを提供し続けることができます。
定期的な自己点検や適切な記録管理などを通じて、常に基準に適合した運営を維持していきましょう。
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